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金利上昇期における繰り上げ返済の優先順位と手元資金の残し方

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金利上昇期における繰り上げ返済の優先順位と手元資金の残し方

金利上昇期における繰り上げ返済の優先順位と手元資金の残し方

2026/09/18

長らく続いた低金利時代が転換点を迎え、金利上昇のニュースが連日のように報じられています。

不動産オーナーにとって、金利上昇は「ローン返済額の増加」という形で、賃貸経営のキャッシュフロー(手残り)に直結する死活問題です。

 

「変動金利が上がって利息が増えるくらいなら、手元の現金で早めに繰り上げ返済をしてしまおうか」

 

そうお考えのオーナー様も多いのではないでしょうか。

確かに借入残高を減らせば利息負担は軽減されます。

 

しかし、不動産経営において「手元資金(キャッシュ)を減らすこと」は、

金利上昇以上の致命的なリスクを孕んでいます。

 

本記事では、金利上昇局面に直面する不動産オーナーに向けて、絶対に枯渇させてはいけない「手元資金の適正な残し方」と、経営を圧迫しないための

「繰り上げ返済の正しい優先順位」について徹底解説します。

 

 

1. 危険!「とりあえず繰り上げ返済」が招くキャッシュアウトの罠

 

金利上昇の不安から、手元の現金をかき集めて繰り上げ返済を急ぐことは、実は非常に危険な行為です。

なぜなら、不動産賃貸経営における「現金(キャッシュ)」は、企業における「血液」と同じだからです。

安易な繰り上げ返済が招くリスクには、主に以下の2つがあります。

 

リスク①:突発的な出費に耐えられなくなる(黒字倒産リスク)

不動産経営には、予期せぬトラブルが付き物です。

・給湯器やエアコンの同時多発的な故障 ・台風や地震などの自然災害による緊急修繕

・大口テナントや長年住んでいた入居者の突然の退去に伴う、大規模な原状回復費用

 

繰り上げ返済によって手元資金がカツカツの状態でこれらの事態が起きると、修繕費が払えず、

次の入居者も募集できないという負のスパイラルに陥ります。

帳簿上は利益が出ていても、手元の現金がショートすれば経営は破綻します(いわゆる黒字倒産です)。

 

リスク②:税金が高くなり、さらに現金が減る(税務上の罠)

不動産投資ローンの「利息」は経費になりますが、「元本の返済」は経費になりません。

繰り上げ返済を行うと、今後の「支払利息(経費)」が減るため、帳簿上の利益(不動産所得)は大きくなります。

利益が大きくなるということは、翌年の所得税・住民税(法人の場合は法人税)が高くなるということです。

「繰り上げ返済で現金が減った」ところに「税金が高くなってさらに現金が奪われる」というダブルパンチを受けることになり、キャッシュフローが急激に悪化する恐れがあります。

 

 

2. 不動産オーナーが確保すべき「手元資金」の適正ラインとは?

 

では、繰り上げ返済を検討する前に、一体いくらの手元資金を残しておくべきなのでしょうか。

物件の規模や築年数にもよりますが、安全な賃貸経営を続けるための目安として「最低でも満室想定家賃の6ヶ月〜1年分」、あるいは「年間の総支出(ローン返済額+ランニングコスト+税金)の半年分」は、絶対に手をつけない「防衛資金」として確保しておくべきです。

具体的に、手元資金は以下の3つの用途に分けて計算します。

 

① 空室・滞納対策資金(生活防衛資金)

 

もし明日、物件の稼働率が半分になったとしても、半年間はローン返済や生活費を自分のポケットから持ち出せるだけの資金です。最低でも「毎月のローン返済額×6ヶ月分」は確保しましょう。

 

② 大規模修繕・設備更新の準備金

築年数に応じて必要になる修繕費のストックです。 一般的に、木造アパートであれば築10年〜15年で外壁塗装や屋根の修繕が必要になります(数百万円単位)。

また、給湯器の寿命は約10年です。向こう3〜5年以内に発生しそうな修繕費用を見積もり、その分は繰り上げ返済の原資から除外してください。

 

③ 納税準備金

毎年春にやってくる固定資産税・都市計画税や、確定申告後の所得税・住民税・消費税の支払いに備える資金です。

「利益が出たから全額繰り上げ返済に回す」のではなく、必ず「納税用の現金」を別口座に取り分けておく仕組みを作りましょう。

 

【シミュレーション例】 ・毎月の家賃収入:100万円 ・毎月のローン返済額:50万円 ・毎月の経費:20万円

 

この場合、月の総支出は70万円です。半年分の防衛資金として「70万円×6ヶ月=420万円」、

これに直近の修繕予定費(例:200万円)と納税準備金(例:100万円)を足した「720万円」が、常に口座に残しておくべき最低限のキャッシュとなります。これを上回る余剰資金ができて初めて、繰り上げ返済を検討する土俵に上がります。

 

 

3. 金利上昇期を勝ち抜く!繰り上げ返済の「正しい優先順位」

 

十分な手元資金(余剰資金)があることを確認したら、次はいよいよ繰り上げ返済の実行です。

複数のローン(アパートローン、日本政策金融公庫、プロパー融資など)を組んでいる場合、適当に返済してはいけません。

必ず以下の優先順位に従ってターゲットを絞りましょう。

 

優先順位第1位:金利の高い「変動金利」のローン

 

金利上昇期において真っ先に潰すべきは、当然ですが「変動金利」かつ「現在最も金利が高い(あるいは優遇幅が少ない)」ローンです。

例えば、金利1.5%のローンと2.5%のローンがある場合、2.5%のローンから優先して繰り上げ返済を行うことで、利息の削減効果を最大化できます。

 

優先順位第2位:残債が少なく、完済が近いローン

 

あえて「金利」ではなく「残債」に着目する戦略です。

例えば、残債が残り300万円のローンを全額一括返済してしまえば、毎月十数万円あった「返済額そのもの」がゼロになります。

これにより、毎月のキャッシュフローが劇的に改善します。

金利上昇で他のローンの返済額が増えたとしても、ここで浮いたキャッシュフローが強力なクッション(防波堤)となります。

 

優先順位第3位:自宅の住宅ローン(※重要)

 

もし、不動産投資用ローンとは別に、ご自身の「自宅の住宅ローン」を抱えている場合、自宅のローンから優先して繰り上げ返済するのが鉄則です。

理由は「経費」です。前述の通り、投資用ローンの利息は不動産所得の計算上「経費」にできますが、自宅の住宅ローンの利息は経費にできません(住宅ローン控除期間終了後の場合)。

手出しのキャッシュが減る痛みを伴うなら、経費化できない自宅ローンから消していく方が、個人のトータルでの財務改善効果は高くなります。

 

 

4. 繰り上げ返済には2種類ある!不動産オーナーが選ぶべきはどっち?

 

繰り上げ返済を実行する際、金融機関から「期間短縮型」と「返済額軽減型」のどちらにするかを聞かれます。

ここでの選択を間違えると、キャッシュフロー改善の目的が達成できません。

 

期間短縮型: 毎月の返済額は変えず、ローンの返済期間を短くする方法。総支払利息の軽減効果は一番高い。

返済額軽減型: ローンの返済期間は変えず、毎月の返済額を減らす方法。総支払利息の軽減効果は期間短縮型に劣る。

 

一般的に個人の住宅ローンでは「期間短縮型」が推奨されがちですが、不動産賃貸経営においては原則「返済額軽減型」を選ぶのが正解です。

 

金利上昇期における最大の課題は「毎月のキャッシュフローの悪化」です。

期間短縮型を選んでしまうと、手元の現金が大きく減るにも関わらず「毎月の返済額」は1円も安くなりません。

これでは、金利上昇による今後の返済額アップのショックを吸収できません。

「返済額軽減型」を選び、毎月のキャッシュアウト(流出)を確実に減らすことで、手残りを増やし、再び手元資金を厚くしていく好循環を作り出すことが重要です。

 

 

5. 繰り上げ返済の「前」に検討すべき3つの代替アクション

 

ここまで繰り上げ返済の戦略を解説しましたが、実は手元の現金を1円も減らさずに、金利上昇リスクを回避・軽減する方法があります。現金を投下する前に、必ず以下の3つのアクションを検討してください。

 

① 他行への「借り換え」を検討する

現在の金利よりも低い条件を提示してくれる金融機関への借り換え(リファイナンス)です。変動金利から、長期固定金利(または10年固定など)に借り換えることで、今後の金利上昇リスクを完全にシャットアウトできます。ただし、借り換えには登記費用や事務手数料などの諸経費(融資額の数%程度)がかかるため、トータルコストでのシミュレーションが必須です。

 

② 現在の借入先へ「金利引き下げ交渉」を行う

意外と知られていませんが、他行の借り換え見積もりを武器にして、現在借り入れている金融機関に「金利の引き下げ(金利交渉)」を打診することは有効な手段です。「これまで滞りなく返済してきた実績」や「高い稼働率を維持している経営手腕」をアピールし、借り換えられるくらいなら金利を下げよう、と銀行に思わせることができれば、現金を減らさずに利息負担を減らすことができます。

 

③ 本質的な解決策:「家賃アップ(収益力の強化)」

金利が上がって支出が増えるなら、収入を増やせば良いという経営の基本です。 退去が出たタイミングで、相場を見極めつつ募集家賃を数千円でも引き上げる。あるいは、空室対策として人気の設備(無料Wi-Fi、宅配ボックス、スマートロックなど)を導入し、物件の競争力(=利回り)を高めることに手元資金を投資した方が、結果的に繰り上げ返済よりも高いリターン(キャッシュフローの増加)を得られるケースは多々あります。

 

 

6. まとめ:金利上昇期は「キャッシュ・イズ・キング」の視点を

 

金利のある世界が戻ってきた今、不動産オーナーにはこれまで以上に高度な財務マネジメント能力が求められます。 本記事のポイントをまとめます。

 

手元資金の確保が最優先: 「とりあえず繰り上げ返済」は黒字倒産や税負担増のリスクあり。家賃半年〜1年分の現金は絶対にキープする。

優先順位を明確に: 繰り上げ返済するなら「高金利の変動」「残債が少なく完済できるもの」「経費にならない自宅ローン」から。

方式は「返済額軽減型」一択: 毎月のキャッシュフローを改善させ、ディフェンス力を高める。

代替案の検討: 繰り上げ返済の前に、借り換えや金利交渉、物件のバリューアップ投資を比較検討する。

 

金利上昇を過度に恐れる必要はありません。大切なのは、パニックになって手元の弾(現金)を撃ち尽くさないことです。

「キャッシュ・イズ・キング(現金こそが王様)」。

 

この経営の鉄則を胸に刻み、まずはご自身の保有物件の「家賃収入・ローン返済額・手元現金・今後の修繕予定」をエクセル等で洗い出し、安全な財務シミュレーションを行うことから始めてみてください。

 

(※ご自身の詳細な税務インパクトや財務戦略については、不動産に強い税理士へのご相談を強くおすすめします。)

 

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